今回は、ニュージーランドの教育で特徴的な
「個性」や「自分で考える力」の育て方についてお話しします。
日本の公教育を受けていると、先生が教科書に沿って「正しい答え」を教えてくれるという授業スタイルが一般的です。
もちろんその良さもありますが、ニュージーランドでは少し違うアプローチが取られています。
「考える力」を育てる問いかけ:授業も、社会も
ニュージーランドの教育では、「正解を教える」よりも「問いを投げかけて考えさせる」ことが重視されています。
たとえば理科の授業で、生徒たちは先生から「この植物がこの場所にしか生えないのはなぜだと思う?」と問いかけられます。
そして、生徒自身の興味から「他の地域との気候の違いは?」「水はけや土の成分は?」など、新たな疑問が生まれ、調べ、ディスカッションするよう促され、それをまとめたりします。
こうした「問いから学びを広げる」姿勢は、学校だけでなく社会全体にも表れています。
かつてニュージーランドの首相だったジャシンダ・アーダーン氏は、コロナ禍での記者会見で子どもたちから届いた質問にも真摯に応えました。
コロナの状況下で「サンタクロースは来てくれるの?」「歯の妖精(抜けた歯を持ち去ってくれる妖精)は大丈夫?」という素朴な問いに、政府の立場からライブで丁寧に答えていたその姿勢は、子どもたちの問いかけを一人の市民として尊重する文化のあらわれでもあります。「問いを持つこと」「自分の考えを持ち、それを言葉にすること」は、ニュージーランドではごく自然なことです。
このように、自分で問いを立て(探求型、inquiry-based)、調べ、考え、表現するというプロセスが日常的に行われるのが、ニュージーランドの学校教育です。
基礎も大切にしつつ、バランスをとる教育へ
とはいえ、「問いを立てる学び」だけでは十分な学力がつかないのでは?という心配ももっともです。
実際にニュージーランドでも、近年は「探究型ばかりではなく、読み書き・計算などの基礎力とのバランスが重要だ」という考えが広がり、教育の見直しが進んでいます。
つまり、「探究力」と「基礎力」どちらも大切にするバランス型の教育に、現在ニュージーランドの教育は向かおうとしています。
「考える力」はどう育つ?
実際の学校生活では、以下のような活動が行われます:
問いかけに対してリサーチ(自分なりに調べる)
グループディスカッション(自分の考えを表現し、考えの違いを受け止める力を養う)
エッセイやレポートの執筆(「自分の視点」をしっかり述べる)
このプロセスを通して、情報を受け取って考え、他人と意見を交わし自分の視点で整理し、それをまとめて他人に伝えるという、実践的なスキルが身についていきます。
個性に合わせた科目選択が可能
高校では進級するにつれて選べる教科が多彩になるのも特徴です。幼児教育、ファッションデザイン、会計、写真、アウトドア教育、園芸、旅行学、ホスピタリティ、メカトロニクス等々、日本では見かけない多様な教科が公立高校でも選べます。
生徒たちは自分の将来を思い描きながら教科を選択しますし、それが大学や専門学校などに進んだ時の学びの基礎になるよう、授業内容も本格的に設計されています。
日本からの留学生たちも、受験だけではなく自分の将来について、おぼろげながら考え出すことになるでしょう。
子どもが変わっていく様子を、私たちは見てきました
「人と話すのは苦手…」と言っていた子が、いつの間にか英語で自分の言いたいことを堂々と言えるようになる姿を、私たちは見てきました。
初めは戸惑っていた子も、数か月たつといつの間にか表情が変わり、「自分の考えに自信を持つ」ようになっていきます。
その変化を支えているのが、まさに「個性を伸ばし、考える力を育てる」NZの教育なのだと思います。